弁護士に頼むと一般的にどのくらいの費用がかかるの?

 

第1、弁護士報酬規程

平成16年3月までは「弁護士報酬規定」なるものが存在していたため、全国的に弁護士に頼んだ場合の費用は明確だったといえます。
 もっとも、この弁護士報酬規定が無くなってから弁護士登録をした私がこの報酬規定を見た場合、「高すぎる。」という印象を持っています。大きな会社等が弁護士に依頼する際の料金だと考えれば合理的に見えることもあるのですが、生活者の感覚には合致しない金額です。旧弁護士報酬規定の基本的な考え方は、訴額(訴訟で請求したり、請求されたりする金額)に比例して、弁護士の着手金と報酬金が上昇する仕組みになっており、例えば、労災で一家の柱を失った家族が高額な訴額の訴訟を起こしたりする場合には、単純計算をすると「とても払えない」着手金になってしまうのです。もっとも、報酬規定が存在した過去においても、労災で一家の柱を失った家族等の資力が乏しい依頼者等には、心優しい弁護士が着手金部分については手弁当等で対応してきたことも多かったと思いますので、必ずしも資力が乏しい依頼者が裁判を起こせなかったわけではありません(勝訴額が高ければ弁護士の報酬金の額は多くなります。)。
 いわゆる規制緩和の流れにのり、この弁護士報酬規定が廃止されたことで、そして、弁護士の増員が進み競争が激化したことで、弁護士費用の平均価格は下がってきていると感じます。
 もっとも、過去の遺物である弁護士報酬規定に基づき弁護士費用を算定する弁護士が今でも存在しますし、一律に弁護士費用が下がったわけではありません。また、値段の高低と弁護士の質や熱意は相関もないため、お客様にとって弁護士選びが難しいことには変わりありません。
 結局、最終的には弁護士に面談した後で、お客様自身が弁護士の質・熱意を見極め、値段を確認した上で、最終決定すべきでしょう。

第2、弁護士選びのコツ

 私が考える弁護士選びの注意点をいくつか列記いたしますので、よろしければ参考にして下さい。

①弁護士と必ず面談し、その説明がわかりやすいか、で判断する(説明がわかりやすい人は、裁判所でも説得がうまいと考えていいでしょう。)。
②初回相談は、どうしても事件の内容が中心的話題になりますが、発注する前に値段を必ず確認すること(事件の内容に夢中になって、弁護士費用を確認せずに発注してしまう方が多いと感じます。)。
③値段が高いと思ったら頼まない勇気を!(弁護士は一部の地域を除いてたくさんいます。)
④日本司法支援センター(法テラス)と民事法律扶助の契約をしている弁護士かどうかを事前に確認する。

第3、法テラスを利用した場合の弁護士費用の概略

【重要】
 冒頭で私は、弁護士報酬規定を「高すぎる。」と一刀両断にしましたが、法テラスが定める弁護士報酬の基準は、弁護士から見て「かなり安い」ものです。

※ただし、離婚事件は、①離婚、婚姻費用・養育費、監護権者・親権者の争い、面会交流等のメニューが多くなること、②調停で解決しない場合は、審判や訴訟に移行すること等の理由により、法テラスを利用した場合に逆に弁護士費用が高くなる場合もあるため、注意が必要です。

法テラスの民事法律扶助の制度は、一定の資力要件を満たす人に利用資格が限定されますが、弁護士費用を立て替えてくれる上、全国一律かつ低額の弁護士費用で弁護士を利用できる制度で、多くの方が利用されています。
そして、高すぎる過去の弁護士報酬規定に対し、法テラスの弁護士料金は、現在の弁護士費用の「裏スタンダード」とも呼べるものですので、弁護士と値段の交渉をすることが億劫な方は、法テラスと契約している弁護士に依頼し、民事法律扶助を利用すれば、少なくとも弁護士に過大な費用を請求される心配はありません。
 とりわけ、冒頭で述べた高額な訴額の訴訟の場合でも、法テラスの場合、弁護士着手金の上限があり、しかもかなり安いのです。やむを得ず、高額な訴額の訴訟を起こさざるを得ない方は、法テラスの民事法律扶助の利用をぜひ検討下さい。
 なお、民事法律扶助制度の詳しい内容は法テラスのホームページ等で確認下さい。

第4、原告側の弁護士の概略
 弁護士着手金は一般的に、訴額に応じて高くなる料金体系を取っている弁護士が多いと思います。
 例えば訴額が200万円ならば、着手金20万円~30万円(消費税別途)で、訴額が2000万円ならば、着手金50万円~100万円(消費税別途)という感じになります。
 しかし、私は、この慣習に大いに疑問を感じています。なぜなら、着手金は、弁護士が活動するための対価といって良いと思いますが、弁護士の活動に必要な労力や時間は、この訴額には全く連動しないのです。
 例えば貸金請求事件や過払金返還請求事件の場合、訴額が2000万円であろうと、弁護士に要求される労力や時間は、比較的にわずかなものです。
 一方で、セクハラや医療訴訟等の損害賠償請求事件(不法行為と呼ばれるもの)の場合、訴額が仮に200万円でも、証人尋問の準備、医療カルテの読み込み・翻訳等、弁護士の労力と時間は相当のものが要求されます。
 ですから、私はさきほど、弁護士料金が高いか安いか、お客様が見極める必要があると申しましたが、実際には裁判の「内容」も詳細に検討しないと、弁護士費用が妥当なものかどうかも本当は判断できないのです。

第5、まとめ
 というわけで、私の結論は、当コラムを読んでいただいた方には恐縮ですが、適切な弁護士費用の算出は難しいということです。
 しかし、面談をした弁護士が弁護士費用について丁寧な説明を行い、その価格にお客様が納得できるのであれば、契約書にサインして良いと考えます(当たり前ですが、説明と契約書の内容が異なっていないかどうか、必ずチェックして下さい。)。

 ホットライン法律事務所(北海道札幌市所在)では、受任する前に弁護士費用を明確に説明することをモットーとしています(報酬金はパーセントか、定額で設定します。)。
 なぜなら、弁護士は事件を解決するのは当然のこととして、お客様が納得できる値段で紛争解決を実現することが今、求められていると考えるからです。そして、値段に関する説明はお客様に発注いただく段階で出来なければ意味がありません。

2019年08月05日