裁判の勝敗の決め手になるものは何か?

「裁判の勝敗は弁護士で決まる!」と言いたいところですが、それは違うと思います。結論から言うと、裁判に勝つために最も重要なものは「証拠」です。
裁判は、簡単に説明すると、法律的な「主張」と、それを裏付ける「証拠」を明らかにすることで進んで行きます。例えば、過払い金請求事件などの多くは、その主張が決まっており、証拠もほぼ自動的に揃ってしまうので、弁護士にとっては極めて簡単な仕事と言えるのです。
 法律的な主張は、弁護士の法的知識や法的センスが要求されることもあり、この点からは弁護士の能力が重要なポイントになるのですが、多くの訴訟で出てくる主張は、それほど驚くようなものはありません。むしろ、驚くような主張をしなければならない時点で、その当事者は相当に苦しい状況に置かれているということになります。
原告と被告の主張が揃ったところで、その主張を基礎付ける証拠が精査されるわけですが、どちらか一方の当事者が信頼できる書面等(貸金の借用書・売買契約書・不倫の証拠写真・交通事故における実況見分調書・帳簿・銀行の振込送金票等)を裁判所に提出できると、その当事者は有利な立場に立ち、その相手方はその証拠から強く推測される事実を打ち消すのに大変な労力を使う必要がありますし、覆せる可能性はかなり低いです。
ただし、前記の有力な証拠は、必ずしもお客様が弁護士に持ち込んだものが全てではなく、弁護士がその資格を活かして調達し、その熱意をもって分析するタイプのものもあるのです(「銀行の取引履歴」、医療訴訟・労災訴訟・交通事故の訴訟等における「医療カルテ」・「医療文献」などが代表的なものです。)。
お客様が持ち込んだ証拠だけで勝利が予測される事件は、それで良いのですが、勝敗の見通しが不透明な事件では、弁護士が労を惜しまず、この作業にエネルギーを注げるか、ということが重要になります。
たしかに「勝った・負けた」ということは、お客様にとって重要なことですが、勝って当然の事件、負けて当然の事件も多く存在します。弁護士が、先に述べた証拠の収集・分析に力を発揮し、裁判に勝ったのならば、それは弁護士の勲章ですし、お客様はその弁護士を評価すべきだと思います。
一方で、弁護士がお客様の集めた証拠だけで、漫然と裁判を戦い、敗訴したならば、それは弁護士の怠慢と評価できます。
 仮に、弁護士が追加で集められる証拠が全くないと事前に予測されていたのであれば、その弁護士は、お客様に対して、「勝ち目がない、あるいは、勝つことは相当難しいが、それでも弁護士に委任しますか?」と事前に説明すべきでした。
この業界では、「勝ち筋」「負け筋」という言葉を使うことがありますが、多くの訴訟は事前に、勝ち負けが予測されており、裁判の途中で、強力な証拠が追加提出されない限り、結果は予想通りのことが多いものです。
 弁護士も一人の自営業者ですから、お客様に対し、負け筋であることを秘して、着手金を取りにいくこともあると思います。
 したがって、お客様は、勝敗について、ある程度の見通しを聞き取った上で、発注すべきです。
法律相談等で、明らかな負け筋の場合に、私がその事実を伝えると残念そうな顔をされる方が多いですが(たぶん、冷たい弁護士だな、と思われています。)、負け筋であることを秘して着手金をお客様から得ることは、正しいことだと思っていませんし、お客様にとっても、無駄なお金を使わずに済んだという点で良いことだと思っています。
もっとも、私が負け筋であることを説明した上で、お客様から真実を明らかにして欲しい、やれるだけやって欲しいと懇願された結果、私が受任し、証拠を徹底収集・分析し、裁判で勝訴できた事案もあります。
そういう点からは、最初から勝ち負けが決まっているわけではないのですが、弁護士に着手金を払って訴訟を起こす、または、訴訟を受けて立つということの「メリットとリスク」について弁護士は事前に十分過ぎるほど説明をすべきだと考えています。
 ホットライン法律事務所(北海道札幌市所在)では、お客様がお持ちの証拠を精査し、お客様のお話を丁寧に伺うことで、受任する前に勝敗の見通しを立て、説明するように心掛けています。

2020年09月13日